はじめに

 この度、第11回トランスポーター研究会年会(11th JTRA)を京都大学 宇治キャンパスで開催いたします。本研究会は、医学、薬学、農学、工学、理学、栄養学など多様な分野でトランスポーターや膜タンパク質関連を研究する研究者が一同に集い、分野を越えた交流や新たな研究の創成を目指して設立されました。トランスポーターやポンプ、チャネルなどの輸送体研究はこの数十年で、生化学的な輸送機構の解析から、その後の分子の同定や結晶構造解析、活性制御因子の発見など目覚ましく進展してきています。また、ゲノム解析だけでなく、プロテオームなどオミクス技術なども発展し、多様な解析手法からアプローチすることが可能となっています。その輸送体の機能は、「生体膜を介して物質を運ぶ」と述べると簡単に聞こえますが、生理的な役割は我々人間の生活と密接に関わっており、医薬品の体内動態や効率的な吸収に働き、またその機能欠損は多くの疾病の原因となっています。さらに、植物では土壌栄養の効率的な吸収を含め環境応答に関わり、食糧生産にも貢献しています。微生物においても、生育や環境適応に必須であるとともに、輸送体を活用して、有用物質の効率的な微生物生産も行われています。これら多様な研究に携わる研究者が集い熱い議論を交わし、新たな共同研究や新領域の創成に繋がることを11th JTRAでは目指しています。

 

 11th JTRAでは、「医療系」、「動物・構造解析系」、「植物系」、「微生物系」それぞれにフォーカスを当てたシンポジウムを企画し、また、これからの本会の発展を担う新世代(学生・ポスドク)のさらなる参加と活躍を期待し、ポスター発表から数題の口頭発表を予定しています。さらに、特別講演では大阪大学 吉森保先生より、オートファジーと疾患についてのお話をいただきます。

 

 奇しくも、京都での開催は第3回、第7回に続いての4年ごと、夏季オリンピックと同年になっております。オリンピックにも負けない熱さで開催される、国内の気鋭の若手・中堅を中心とした研究者の祭典、ぜひご参加いただき、共に響宴いただければ幸いです。

年会長 士反 伸和